鉄道会社の旅客収入とGDPの関係
今回は鉄道会社(JR3社)の旅客収入と経済成長率(GDP)との関係を分析してみたいと思います。
鉄道の旅客数は一般的に景気にやや遅行すると言われています。おそらく、利用者の増減と景気の動きに遅行する雇用情勢が深く関連しているためと考えられます。
では、1997年度以降のJR3社の旅客収入と実質GDPの関係を見てみましょう。
上から順に、JR東日本、JR西日本、JR東海です。
これを見ると、やや遅行しているものの、概ね年度ベースで見ると、旅客収入は経済成長率(実質GDP)に連動しているといえます。ところどころ、連動していない年度がありますが、地震などの特殊事情が含まれているためです。
では、ここから、もう1歩、発展させましょう。
この関係を元に、まだ各社から見通しが発表されていない、今期、来期の旅客収入の見通しを探ってみます。そのために、必要なのが、経済成長率(GDPの変化率)に対する旅客収入の感応度(β)と、2009年度、2010年度の実質GDPの見通しです。実質GDP予想については、今回は、第一生命経済研究所の見通しを利用させていただくこととしました。
まず感応度(β)を求めます。旅客収入とGDPの数値があればエクセルで簡単に求められます。
それによると、過去11年間のベータ(β)は、JR東日本0.60、JR西日本0.93、JR東海1.09となりました。数字が大きいほど変化率が高くなる(影響が大きい)という意味です。たとえば、ベータが1とすると、GDPが1%増えたら、旅客収入も1%増える。ベータが0.5とすると、GDPが1%増えたら、旅客収入は0.5%増えるということになります。
つまり、この数値から景気の影響を読み取ることができ、JR東海、JR西日本はかなり景気に敏感に反応するといえます。一方、JR東日本は景気の影響は相対的に低い(ディフェンシブ)といえるでしょう。
第一生命経済研究所の最新予想によると、実質GDPは2009年度-4.5%、2010年度1.4%となっています。
最後に、この予想に先ほど求めたベータを掛け合わせてやります。そうすると、JR各社の大まかな旅客収入の見通しを作ることができます。実際には、各社の特殊要因(地震、新線開業など)を考慮する必要がありますが、詳細に分析することにそこまで意味はないでしょう。
以下に表をまとめました。
JR東海の今期の旅客収入は5%近い減収が予想される一方、JR東日本は3%程度の減収で済みそうです。鉄道業は装置産業なので旅客収入の減収は利益の減少に直結します。そういう意味ではJR東日本に相対的な投資魅力があるでしょう。
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