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2009年7月11日 (土)

円高を考える

  対ドル円高に振り回される毎日が続きます。そこで、円高について少し考えてみたいと思います。

 過去を振り返ってみると、円高が必ずしも株式市場の重石となっていたわけではありません。2005年以降は確かに重石でしたが、これからもそうであるとは断言できないところが面白いと思っています。

 まず、第一次石油危機のあった1973年からドル・円の動きを見ましょう。197320090712

 1987年あたりから、ドル・円は基本的に100円ー150円の比較的に狭い範囲の中を、かなり規則的な波動を描きながら循環しています。株式市場の大きな変化に馴れた目から見ると、意外に思えるほどきれいな波動です。この波動のダイナミズムが理論的に解明されれば素晴らしいことなのでしょうね。

 では、円・ドルの動きと景気循環との関係を調べて見ます。景気循環の指標としては、鉱工業の在庫循環モメンタムを使います。出荷金額の変動率から在庫循環の変動率を差し引いたものです。20090712

 ポイントは2つ。

 1つ目は、長期的に見れば、円・ドルと景気指標はいつも連動しているわけではないということです。両者の間に、目に見える連動性はないということです。したがって、円・ドルの動きを理解するために経済指標を追いかけることには大きな意味がないということになってしまうのですが、そこのところが円・ドルの醍醐味なのかもしれません。

 2つ目は、2005年以降は両者の間に強い連動性が見られるということです。景気が悪化すると円高になるのか、円高だから景気が悪化するのか? ニワトリとタマゴの関係ですね。

 次に、円・ドルと日経平均株価の関係です。20090712_2

 またポイントは2つです。

 1つ目は、両者の間に目に見える連動性がないということ。円高だから株価が下落するとは言えないということです。同時に、円安だから株価が上昇するということも言えません。

 2つ目は、2005年以降になると、両者に強い連動性が見られるようになります。円安で株価が上昇し、円高で株価が下落するのです。

 以上から言えることは、2005年以降に限って言えば、円・ドル、景気指標、日経平均株価の3者の間に強い連動性が見られるということです。

 円高になると、景気が悪化して、株式市場も下落する。最近お馴染みになったパターンが浮かび上がります。

 それでは今後は?

 私は、ドル・円の長期的な流れの中で見て、円高はかなり行き着くところまで来たと思っています。ということは、今後さらに円高が進行したとしてもたかが知れているということです。であれば、景気が悪化しても同様にたかが知れているということであり、株価の下落も限定的ではないがと考えます。

 もちろん、長期的に見れば、この3者の間に安定的な関係はありませんから、決して油断はできないのですが、株式市場に対して必要以上に悲観的になるのは避けようと思っています。

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