伊藤園の優先株(2)
相変わらず、食品株の好需給銘柄である伊藤園(2593)、アサヒビール(2502)は新値を更新中です。単純に業績面だけを考えれば、両社とも冷夏、長雨で厳しいはずですが、全くおかまいなしと言ったところです。本当に株は難しいものです。
さて、前回伊藤園の優先株(25935)についてお話しましたが、今回は伊藤園の業績の中期的な位置付けについてお話します。
同社は2007年4月期まで高成長を遂げてきました。2000年4月期に138億円であった経常利益が2007年4月期には223億円まで拡大しました。しかし、その後業績は大幅に悪化し、2009年4月期には104億円と2年間で半分以下となりました。
そもそも伊藤園の高成長の背景は、同社の販売システムにあります。一般的に日本における食品の販売は卸売業を通じて小売業に販売されます。大多数の企業は卸経由ですが、同社は自社で販売する会社です。そのため、伊藤園の飲料はスーパーだけではなく、弁当屋、総菜屋、パン屋、肉屋などあらゆるネットワークで販売されています。それらの小さな店は、スーパーなどと異なって値引率が小さいために、伊藤園の収益性を支えています。
一方、この2年間業績が大きく悪化した背景は、世界的なコストアップです。そのため、2007年から各種の食品の値上げが行われました。しかし、飲料業界は競争が激しく、しかもトップシェアのコカ・コーラのシェアが継続的に低下しているため、コカ・コーラが値上げに踏み切れませんでした。トップが値上げをしないと2番手以下は値上げをできません。そのために、飲料会社の業績は皆悪化しました。
そのコストですが、世界的な景気減速から今年になって大きく低下しています。そのため、そろそろ増益への転換が見込まれます。しかし、普通株はすでに1,600円を超えていますので、PBRは2倍、PERは40倍と割安感はありません。
一方、業績がさらに悪化するリスクはかなり小さくなっていますので、優先株の配当48円が減配される可能性は少ないのではないでしょうか。
若干時期的な注意点を言いますと、来週第一四半期決算が発表されますが、冷夏、長雨の影響で厳しい可能性があります。また、配当利回りが高いので配当取りの動きもしばしば見られ、10月末、4月末に一旦株価が天井を付けることがあります。この2点には注意が必要です。
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