「エスフーズ(2292)」(その2):春 研一
今回はエスフーズの続きです。
ここ1年ほど食肉関連企業の業績は全般に厳しい状況にあります。これは特に輸入鶏肉の需給バランスが大きく崩れたためです。リーマンショックまでの数年間、新興国の経済拡大を背景に、穀物市況の上昇、食肉需要全般の増加があり、それに加えて鶏インフレ、狂牛病などによって、世界的に食肉需給がタイト化し、価格が上昇しました。そのため相対的な価格が低い鶏肉に需要がシフトしたことによって、鶏肉の収益が大きく拡大しました。
しかし、ここ1年は全く逆の現象となり、食肉全般の価格が大きく低下したため、鶏肉の消費がやや落ち込んで、牛肉の消費量が順調に増加しています。日本ハムの第1四半期における肉種ごとの数量を見ると、牛肉は6.1%増となっていますが、鶏肉は1.8%減でした。ただし、牛肉の中では低価格帯に需要がシフトしています。そのため日本ハムの牛肉の販売金額は8.5%減でしたが、内臓肉など比較的低価格帯のウエイトが高いエスフーズの第1四半期の販売金額は0.4%増と順調でした。
以上が、他の食肉企業の業績が不調にもかかわらず、エスフーズの業績がここまで好調な背景です。
もうひとつの注目点はもつなべブーム再来の兆しです。もつなべは低価格であることもあって、現在と同じようにバブルがはじけた直後の1992年に大ブームとなっています。そのときは1年だけのブームに終わりました。その後再び2005年辺りから、通の間でもつなべのひそかなブームが始まっています。もつなべは材料にコラーゲンが多く含まれていることもあり、女性にも美容食品として受け入れられているようです。
2005年から2007年にかけて注目を集めたのは、いくつかの新規出店したもつなべ屋が注目を集めたことによります。ただし、その段階では一般大衆まで浸透するような状況にはなっていません。このひそかなブームを受けて2008年辺りから、日本ハムやエスフーズが家庭用のもつなべのセットの販売を始めています。昨年の冬に手ごたえのある売上となったため、今年も秋冬用の新製品を発売しました。
前回のブームが短命に終わった一つの理由は味の問題です。内臓肉を材料にするわけですから、鮮度や下処理が重要ですが、大ブームとなったため、多くの外食産業でもつなべをメニューに加え、質の悪いものが現れてブームが沈静化しました。食品の世界は意外と見えないところで技術進歩があり、時の経過によりおいしさが増します。ここ10年ほどの乙類焼酎ブームも革新的製法が開発されたためでした。
今のところ、大ブームという状況ではありませんが、この不況下で、安くて、美容にいいという切り口からブームとなる可能性を秘めているのではないでしょうか。その時、最も恩恵を受けるのはもちろん同社です。しかし、ブームにならずとも牛肉シフトと低価格シフトで業績が順調ですので、リスクは小さいと言えるでしょう。
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