三井松島産業(1518) : 春 研一
世界的な資金の流れに変化が出てきたため、株式市場はかなり波乱の状況です。
これまでの私のディフェンシブ中心という銘柄推奨から言えば、かなり唐突なのですが、今回は三井松島に注目したいと思います。やや短期の推奨です。ただし、長期的に魅力がありますので、短期が嫌いな人は向こう数ヵ月間のうちに買い場を探るという手もあります。
この会社はもちろん石炭の会社です。石炭の会社は日本では、すでに数十年前に斜陽産業となっています。ですから、この会社の設立は1913年(大正2年)なので、まもなく100年が経とうとしていますが、前期末の自己資本は90億円しかありません。つまり、100年かけて自己資本が90億円ですから、年間1億円しか自己資本を積み上げることができなかった、まさに斜陽産業にふさわしい状況です。
しかし、人件費が高く、採掘コストが高い日本で石炭を掘ることは斜陽産業ですが、世界的に石炭は成長産業です。それは、BRICSと言われる新興国の経済成長によって、2000年代に石炭が原料・燃料として注目を集めてきたことによります。
つい1年半ほど前には、三菱商事のオーストラリアの炭鉱事業が脚光を浴びたことは、まだまだ記憶に新しいところです。
実は、三井松島は1990年にオーストラリアに現地法人を設立し、1991年にオーストラリアのリデル炭鉱に出資しています。それがここ2、3年の資源価格の高騰によって、業績に現れ始めたのが2008年度の第2四半期からでした。そのため、2008年度の営業利益はいきなり64億円と前期比5倍に膨れました。
しかし、資源バブルがはじけたことによって、2009年度の当初見通しの営業利益は35億円と大きく減る予想でした。ところが、原油価格を見てもわかるように、10ドル台が150ドルというとんでもない値段に上昇した後に、30ドル台まで落ち、再び80ドルに戻しています。つまり、150ドルはバブルであっても、新興国の経済発展を考えれば、やはり高水準な価格が続くと考えるのが自然でしょう。そのため、石炭価格も今年になって原油価格同様に上昇していますので、同社にとってうれしい誤算となっています。先日発表された三菱商事の中間決算でも、石炭価格の上昇が業績の増額修正要因になっています。
三井松島では第1四半期決算で15億円強の営業利益が出たことから、上期の営業利益を当初見通しの22億円から29億円に増額修正しています。しかし、あくまで市況産業ですので、通期を見通すのは難しいため、通期予想は35億円のまま据え置きました。
中間決算は11月13日に発表予定ですが、同社は去年も四半期の決算発表ごとに業績の見直しをしていますので、今回は通期を増額修正する可能性が高いと考えられます。何せ、上期に29億円で、通期が35億円の予想なのですから。しかも、今のところ原油価格から想像してもわかるように、石炭価格も高水準で推移していますので、増額修正の可能性は高いでしょう。
ただし、決算で増額修正するから、その点に注目しましょうと言っているのではありません。三井松島という斜陽産業に属する会社が、オーストラリアの炭鉱の権利を持っていて、将来的に有望であることを世間はあまり気付いていないと思われます。その証拠に、株価は150-160円ですし、会社予想でもPERは8倍です。増額修正されれば、5倍ということもありえます。もちろん、市況株ですので、PERはあまり当てにはなりませんが。しかし、今回の中間決算で同社のポテンシャルに多くの人が気付く可能性があるということが、大きな注目ポイントになります。
その意味で短期的に、株価が上昇するのではないかと考えています。ただし、中期的にはややリスクを見ておいたほうがいいでしょう。それは、今のミニ資源バブルは、世界的な経済刺激策と米国の低金利の賜物という見方があるためです。しかし、長期的には極めて有望であることに変わりはありませんので、数ヵ月先に改めて安いところを拾うのもひとつの手段でしょう。
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