在庫循環概念図
しばしば、「出荷在庫バランス」や「在庫循環モメンタム」について、きちんとした説明をする機会がありませんでした。
比較的に単純な概念ですので、図を使ってご説明しておこうと思います。
まず最初に、在庫の変動に起因する景気サイクルである「在庫循環」を説明する時に用いられる「逆ウォッチ曲線」から。
4つの局面に分類されます
Ⅰ 在庫積み上がり局面:出荷が減退しているのも関わらず、楽観的な業況判断から、強気の生産が続き、在庫が積みあがっていく要注意の局面です。
Ⅱ 在庫調整局面:業況の悪化に気付き、生産を抑制して在庫を減らそうとします。減産による業績悪化に注目が集まる時期です。
Ⅲ 景気回復局面前期:在庫圧縮が続き、厳しい業況ですが、出荷の悪化が止まり、底打ちの兆しが出てきます。ただし、出荷の水準は低く、企業業績が低迷していますので、悲観的な見方が支配的です。
Ⅳ 景気回復局面後期:出荷の回復が目に見えてきます。悲観的な見方が姿を消します。生産も回復して、企業業績の改善が話題になります。在庫も底を打ちますが、水準としては低い状態です。
以上の4つの局面に分けて景気を判断するのですが、株価との関係では次のような傾向が見えます。
Ⅰ 在庫積み上がり局面 株価の頭打ちが鮮明になってきます。
Ⅱ 在庫調整局面 業績の悪化もあり、株価の下落が鮮明になります。
Ⅲ 景気回復局面前期 株価の底打ちは鮮明になってきます。
Ⅳ 景気回復局面後期 業績の好転もあり、株価の上昇が鮮明になってきます。
したがって、Ⅳが株を買いのに安全性の高い時期なのですが、誰が見ても良い環境のためか、株価の上昇率は限定的であるような気がします。
Ⅲの局面では、マーケットは悲観一色であることから、「不況下の株高」で驚異的な株価上昇率になる銘柄が出てくるため、非常に注目しています。
Ⅰの在庫積み上がり局面では、株式市場が楽観に満ちているので、下落の可能性を念頭に置きながら、ある程度マーケットについていく時期のようです。
Ⅱは厳しい局面で、積極的に売り建てをするか、ディフェンシブ銘柄(景気と逆の動きをする銘柄)を買うべき時期です。
この逆ウォッチ曲線を株価の分析に直接導入することが難しいこともあって、サイクルを波動に置きなおしたものがこの図です。ポイントは出荷(%)から在庫(%)を差し引くということです。数量ベースで指標化したものが、「出荷在庫バランス」、金額ベースで指標化したものが「在庫循環モメンタム」となります。なお米国商務省の統計は金額ベースのため「在庫循環モメンタム」のみとなります。
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