今朝の「米国の株式市場を振り返る 12月31日」の中で、米国株式市場の下落は日経平均株価にマイナス要因、対ドル円安はプラス要因になると指摘しました。
米国株式市場と為替の綱引きを想定しているわけですが、そうなると為替の動向に対してある程度明確な視点を持つことが必要に練ります。
円は強いのか、弱いのか? について考えてみたいと思います。
実は、この問題はドル円だけを見て判断するわけにはいきません。「実効為替レート」という考え方が必要になります。日銀の説明によれば、「特定の2通貨間の為替レートを見ているだけではわからない為替レート面での対外競争力を、単一の指標で総合的に捉えようとする」考え方です。
日銀では15の通貨を貿易ウエイトで加重平均して算出しています。
ただし、日銀は「円の実効為替レート」だけを公表していますので、ここでは、バーゼルにあるBIS(国際決済銀行)のデータによって、他通貨の実効為替レートも比較してみようと思います。BISのデータの制約で直近は10月までですのでご注意ください。
まず、去年(2009年)の動きです。円の弱さが目立ちます。主要通貨の中で最も弱かったと言えます。
ところが期間の取り方で様子は大きく変わります。過去3年でみると、実は円は最強の通貨です。去年は確かに安かったのですが、それを勘定に入れても、依然としてもっとも強い通貨にとどまったままです。
これが何を意味するのか? 米国の金利上昇を受けて、さらに円安に動く余地があるのだろうと私は考えています。
しかしながら、どんでもない円安に動くとは見ていません。理由は長期的なスパンでみた円の実効為替レートの動きにあります。97年からの動きを見ると、実は、現在の水準は強いとも弱いとも判断しがたい微妙な位置にあります。長い目で見ると、居心地は決して悪くないところにあります。
とすれば、今後は、米国の金利上昇から、対ドル円安が進むことが想定されるのですが、少なくともドルはユーロに対しても強含むでしょうから、実効為替レートという観点からみれば、円安の動きはある程度抑えられると思います。
このあたりの議論は、FXブログ「野村雅道と楽しい投資仲間達」に昨年11月30日付で投稿した「『注意報再解除!』(その4):かかし」で触れていますのでご参照いただければと存じます。
そこで、米国の金利の動向です。昨日の週間ベースの新規失業保険申請件数が、コンセンサスを下回ったことから、景気回復期待を盛り上げて、対円、対ユーロでドルが急騰しました。
日米の10年物国債の利回り格差とドル円の動きを重ねると、時に連動性が崩れるのですが、基本的には同じ動きをします。
したがって、米国金利の上昇で、利回り格差が拡大すれば、対ドル円レートは円安方向に振れると素直に見ることができそうです。
以上から、長期的な観点からは大幅かつ持続的な円安への動きは期待しにくいのですが、今年に限れば、米国の金融政策のインパクトで、かなりの円安となることも十分に考えられそうです。
となると、株式市場だけでなく、物価の動向や企業収益に対しても、プラスの影響となることが期待できそうです。
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本文中に使用しているデータやグラフ類は主にここに掲げる各社の公表しているものに大変お世話になっております:経済産業省、内閣府、日本銀行、東京証券取引所、CME GROUP、CBOE,CNN Money、MSN Money、アット・ニフティ・ファイナンス、Yahoo!ファイナンス、外為どっとコム
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