菱食(7451)決算速報 : 春 研一
2月12日に菱食(7451)の前09/12期決算が公表されました。売上高は1.3%減と計画を下回りましたが、営業利益は39.3%増、経常利益は33.5%増、純利益は34.5%増とそれぞれ会社計画を上回る大幅な増益となりました。また、今期会社予想も8.3%増収、7.9%営業増益、9.6%経常増益、26.6%純利増益と順調な見通しでした。予想通りの事前の株価下落、予想通りの増額修正、予想通りの今期見通しとなっていますので、ここからの株価動向が楽しみです。
順調な決算ではあったのですが、予備知識なく細部を見ると、疑問を感じてしまう可能性があります。まず通期決算は大幅な利益増でしたが、第4四半期の3ヶ月(画像の最下段)だけを見ると、7.1%減収、6.0%営業減益と減収幅も拡大し、減益に転じているように見えます。実はこれは、子会社の合併による特殊な減益なのです。
同社は子会社に多くの酒類販売卸を抱えています。最大の企業はリョーショクリカーです。菱食自体の決算期は12月で、酒類子会社の大半も決算期は12月となっていますが、リョーショクリカーだけは9月決算です。つまり、09/12期の同社の連結決算には、リョーショクリカーの08.10-09.9が反映されています。前期に関しては、期中にリョーショクリカーがいくつかの地域酒類卸を吸収合併しました。つまり、それらの会社の業績数字は09.1-09.9までしか反映されず、09.10-12の数字が抜け落ちています。この影響が売上高で270億円あります。
一方、上の画像の菱食の四半期決算を見てもわかるように、10-12月の利益のウエイトが圧倒的に大きくなっていますが、子会社も同じ状況です。最も利益ウエイトの高い時期がぬけてしまったため、利益が落ち込んで見えますが、その影響を除くと実質的には6%程度の増益だったのです。
もうひとつ、第4四半期が伸び悩んだように見える要因があります。まず、第3四半期までの累計営業利益の伸びを見ると、2.9倍となっていますが、それに比べて第4四半期は実質でも6%増益ですから、伸び悩んだように見えます。これは、2008年に始まった食品メーカーの値上げに伴って、大手食品メーカーがリベートの支払方法を変えたことによるものです。従来、期末に一括で支払っていたものを、四半期ごとに支払うように変えたのです。
特に同社の場合、リベートが期末に一括計上されることが多いため、第4四半期の収益構成が圧倒的に大きかったのです。そのため、ここ2年ほどは第3四半期までの収益変化が大きく出て、第4四半期は小さい形になっています。下の画像は、四半期ごとの営業利益前年同期比変化額です。2期分合算のところを見ると、第4四半期のみマイナスで、子会社の合併の特殊要因を考慮しても微増となっています。今期も同様に、第3四半期までは比較的高めの伸びとなり、第4四半期は低くなることが予想されます。
しかも、今第1四半期には前期の第4四半期になくなった酒類子会社の利益が乗ってきます。もちろん、それまであった分は第2四半期にずれるのですが、通常酒類業界はメーカーも含め、10-12月の利益ウエイトが大きく、1-3は赤字ということもありますから、今第1四半期は大幅増益ということも考えられます。
1月24日の菱食の記事でお話したように、菱食(7451)や加藤産業(9869)などの食品卸の株は、この2年間、決算前に株価が売られ、決算後に株価が買われるということを繰り返してきました。これは、世間が卸の顧客であるイオンやイトーヨーカ堂などの業績の厳しさをみて、卸も厳しいのではないかと考えるためでしょう。
http://kakashi490123.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/7451-e32e.html
あまり卸売業のレポートを書くアナリストはいないのですが、たまに書いてあるのを見ると、必ず出てきた業績は好調だが、今後小売業からの値下げ圧力が見込まれると書いてあります。ほとんど、食品流通市場のことを理解していない証拠です。現実には、そのような可能性は低く、毎回決算公表前に買っておけば儲かるのです。場合によっては、決算公表後でも十分間に合います。
唯一の例外は2005年、2006年のようにメーカーコストが上昇した場合、十数年に一度業績が悪化する場面がありますので、その点は注意が必要です。しかし、つい最近悪化局面があったため、今は卸も慎重に対応していますので、当面は心配することがないでしょう。
なお、なぜスーパーの業績が厳しいのに、卸売業の業績が順調なのかは、春研一の「株式投資をファンダメンタルから極める」で詳細に解説しています。興味のある方は、そちらを見てください。
参考URL:http://ameblo.jp/halariga/entry-10414383410.html#main
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