アリアケ・ジャパン(2815)(10.03.24) : 春 研一
アリアケ・ジャパン(2815)はすでに1ヶ月以上前に第3四半期決算を発表していますが、このところ忙しくしていましたので、フォローできていませんでした。改めて、簡単にフォローしておきます。
結論から言えば、国内が順調に回復軌道に乗っていること、海外は米国、中国が減益基調から増益に転じていることはありますが、欧州が景気悪化により欧州事業の立ち上がりが遅れに、遅れ、海外全体としては力強さにかける展開となっています。ただし、収益ウエイトが高い国内の好調から、ようやく全体としての減益には歯止めがかかった状況と言えましょう。
2010年3月期第3四半期(10-12月:3ヶ月)連結業績は、4.3%増収、1.7%営業減益、経常利益は16倍となりました。営業利益がほぼ横ばいであるのに対して、経常利益が大幅に改善しているのは、為替の先物予約に対する為替差損益の関係です。前年同期には対円でユーロが急速に安くなったため、大きな為替差損が発生しましたが、今期は9月末から12月末で為替はほとんど動いてないことによります。今のところ第4四半期は円高ですので、再び為替差損が発生する可能性があります。
第1四半期が1.3%減収、28.3%営業減益、第2四半期が0.5%減収、40.2%営業増益でしたので、四半期ごとに連結業績推移を見てもややトレンドがわかりにくくなっています。これは、前年度から立ち上がり始めた欧州事業の費用の出方が、前年度は四半期ごとにばらつきがあったため、前年同期比ベースでは現状が見えにくくなっているからです。
そこで、連結業績を国内中心の単体、海外中心の連単差にわけて見ることにします。
単体業績の四半期推移を見ると、第1四半期が0.6%減収、10.5%営業増益、第2四半期が3.1%増収、30.2%営業増益、第3四半期が4.1%増収、7.5%営業増益となっています。まず、売上高の前年同期比を見ますと、2009年3月期第4四半期の6.1%減をボトムに、急ピッチの回復を遂げていることがわかります。これは、このところ進めてきた単品営業から、企業対企業の取引への移行が順調に進んでいるためと考えられます。ただし、この方式は顧客当たりの利益率は若干低下する可能性があります。
一方、営業利益に関しては、四半期ごとの伸び率にばらつきが見られます。これは、もともと食品関連業界は季節要因の影響が大きいことに加え、外食産業中心に2009年10、11月辺りまで前年同期比売上高が悪化し続けた影響と考えられます。ただし、それでも同社の場合、2009年3月期第1四半期、第2四半期が20%弱の営業減益、第3四半期、第4四半期が10%弱の減益、2010年3月期の各四半期が二桁近く、もしくは二桁の増益と、明らかにトレンドが好転しています。この第3四半期まで、外食中心に市場が悪化し続けたことを考慮すると、同社の業界内でのシェアは着実に拡大していると考えることができます。
片や、海外(連結-単体参照)は厳しい状況が継続しています。売上高の前年同期比のばらつきは為替の影響が大きいため、細かくは把握できませんが、現地通貨ベースでみると、従来から事業を展開していた米国、中国の売上が厳しいようです。一方、営業利益の悪化幅を見ますと、第1四半期に大きく落ち込んだ後、第2四半期は若干の悪化にとどまり、第3四半期少し悪化幅が拡大しています。
ただし、欧州が立ち上げ期にあることによって、前年度の期ごとのばらつきが大きいため、海外に関しては四半期の営業利益を単純に比較したほうがトレンドはわかるようです。営業利益の赤字幅の絶対額を比較すると、第2四半期が最大で、第3四半期が最小になっています。基本的には欧州事業は売上さえ立てば、赤字幅が縮小するのですが、売上自体が欧州の景気悪化を背景に先延ばしになっているようです。その結果、欧州の利益は期ごとに改善するとは思われますが、売上がほんのわずかしか増えていないので、利益も悪化しない程度にとどまりそうです。
一方、米国、中国はこのところ原価高で苦しんできましたが、原価の大幅アップが一巡し、第3四半期からは、若干ながらも営業利益は改善に向かい始めたようです。
以上を総括しますと、国内は戦略転換が軌道に乗り、回復に転じつつある中、外食市場にやや明るさが見え始めたことから、当面順調な収益拡大が期待されるものと思われます。一方、海外は米国、中国が最悪期を脱したことに加え、欧州は徐々に赤字が縮小するものと思われます。よって会社全体としては、収益は順調に拡大に向かうでしょう。
ただし、株式市場が本格的に同社を評価する局面は、欧州市場の売上が本格的に立ち上がったとき、または欧州市場の拡大により、利益の拡大ピッチが確認された時となるでしょう。
なお、今回はさらっと流していますが、同社は国内では調味料メーカーとして他社を圧倒しており、さまざまな加工食品、外食産業、中食産業で同社は高いシェアをキープしています。極論すれば、日本の味を支配している企業とも言えます。その同社が10年来の夢をかなえるべく欧州進出し、いよいよ工場が稼働しています。欧州の景気悪化により、本格的な立ち上がりが先送りになっていますが、非常に高いポテンシャルがあると考えられます。
これらも含めて、6回にわたってシリーズで解説しています。特にポイントとなる味のコストとクォリティ(成長株の分析8)、欧州市場での展開(成長株の分析9)をそれぞれ詳細に記しています。
成長株の分析8http://ameblo.jp/halariga/entry-10409854339.html
成長株の分析9http://ameblo.jp/halariga/entry-10410640422.html
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