サイゼリヤ(7581):(10.4.9) : 春 研一
サイゼリヤ(7581)の2010年2月期決算のフォローです。興味のある方はご覧下さい。
サイゼリヤの2010年2月上期連結決算は、17.6%増収、営業利益3.4倍と大幅な回復となりました。前年同期にはデリバティブの損失によって、経常利益、純利益が大幅な赤字となっていましたので、経常利益、純利益は大幅に改善しました。第1四半期に上期、通期の期初計画を増額修正していましたが、上期実績はさらにその予想を上回りました。上期は15.5%増収予想が17.6%増収、営業利益3.1倍予想が3.4倍とそれぞれクリアしました。そのため、通期の業績予想も再度増額修正しています。
業績好調の背景は下の図にあるように、不況下において他の外食が不振の中、数少ない勝組となったことです。実際の売上好調は、餃子の王将同様、テレビで取り上げられた効果が大きなものとなりました。それが端的に現れたのが、2009年10月です。ただし、それ以前の2009年6月にテレビ効果で一度良くなったのですが、そのときは図からもわかるように、短期的にその効果が剥げ落ちてしまいました。
しかし、今回は前回に比べて落ち方が緩やかになっています。この背景には前回の失敗を生かした同社の対応があります。第2四半期の3ヶ月間で売上高は前年同期比34億円の増加となりました。会社側では1月にテレビの再放送があったことによって、その分で6億円の売上が乗ったとみています。また、新店の寄与が13億円あったようです。しかし、第1四半期にあったテレビ効果が、依然16億円残ったことが大きかったようです。
これは、前回はテレビで紹介されて、急に売上が伸びて、その後に失速したことを踏まえ、十分な対応を行い、それが効を奏したためです。つまり、前回はせっかくテレビで放映され、多くの顧客が来店したのですが、人気商品が品切れを起こすなどによって、せっかく来店した顧客を定着させることができなかったようです。しかし、今回は十分に準備をしたので、対応ができたということでした。
特に西のほうでの認知度が向上したことが大きい模様です。それまでは西のほうでは知名度も低く、単なる安売り店と認識されていたようです。しかし、テレビ放映によって、単に安いのではなく、安く売れる仕組みを作っているから、いいものを安く供給できていると捉えられ、結果的にブランド力が向上した模様です。同じ安売りでも、ブランド力を向上させる安売りと、ブランド力を下げてしまう安売りでは、結果が大きく異なります。
会社側では上期の好調を踏まえ、通期の業績を増額修正しました。しかし、それでも下期だけをとると前年同期比若干の減益予想となっています。
下期に関しては、業績面でそれぞれプラス、マイナスが考えられます。
まず、プラス面では、新市場の九州の好調と、市場環境の好転が考えられます。新たに出店した九州が現在まで絶好調です。ひとつには、初めてプレスリリースを出したことがあり、マスコミに対して開店前日に内覧会も行いました。ビラ入れ、といっても15万部程度ですが、それも初めて行ったことなどが好影響を与えていると見ています。一方、店舗運営でも、重点商品を決めているなどの政策が当っているようです。間違いなくリピートオーダーが出る商品であるミラノドリア、えびのカクテル、フォカッチャを重点商品として対応しています。加えてこれらの商品は、他の商品に比較して、作業が単純であるため、店舗オペレーションにも好都合であるようです。今のところ1店舗ですが、今後店舗を増やしてゆく予定です。
市場環境の好転もプラス要因となるでしょう。内需が回復したことによって、同社の業績との相関性が高いトラックの通行台数が増えている模様です。今後も子供手当ての支給がありますし、第一生命の上場もすでにありました。これらは個人消費にとってプラスと考えられます。不動産市況が悪いので、家賃が安いこともプラスとなります。
一方マイナス面では、豪州ドル高があります。同社では、豪州から多くの原料を輸入しているため原価高に結びつきます。また、6月のワールドカップは、多くの人が家でテレビを見るという行動を取るためマイナスですが、これは一時的なものと言えます。次に神奈川県の禁煙条例がどの程度影響するかも要注意です。サイゼリヤでは10店は分煙、あとは禁煙にしたようです。
以上のプラス、マイナスはありますが、テレビ放映をうまい具合にブランド強化に結び付けられており、それほどの失速はないのではないでしょうか。そう考えると、下期の減益予想はややコンサバティブに見えます。
なお、今回は速報ですが、より詳しい分析の掲載を予定しています。ただし、他の銘柄との兼ね合いもありますので、どの程度の時間が必要かは現時点で読みきれません。新たに分析記事を書いた場合は、この記事内にお知らせを貼り付ける予定です。
これだけの好調にもかかわらず、回復が期待される多くの消費関連株と比較して株価の動きはやや鈍いものです。むしろ、当該市場の好転では、当該市場が不振であったときに売られた企業が買われやすくなります。それらの株の中にはBPSを大きく割り込んだ企業もあります。本欄でも取り上げたロック・フィールド(2910)やドトール・日レスホールディングス(3087)は、株価が上昇したものの依然PBRは1を割り込んでいます。しかし、環境の好転を折込み、PBR=1辺りまで買われると、今度は先行きの業績水準が意識されるようになります。そうなれば、同社にも目が向く可能性がありましょう。
ただし、中期期なリスクとして考えておかなければならないことは、6月の月次の数字です。前年がテレビ放映で12.3%伸びており、今年は逆にワールドカップというマイナス要因がありますので、二桁のマイナスでもおかしくない状況です。そう考えれば悪くて当然なのですが、そのときの相場環境と同社の株価水準次第でネガティブに反応することはありえます。その意味では、むしろそんなときが絶好の買い場となる可能性もあります。
なお、内需が拡大し、これまで低迷していた消費関連株が注目されそうだという記事を3月初旬から兄弟ブログの「株式投資をファンダメンタルから極める」で連載しています。興味のある方は、こちらをご覧下さい。→五感を使ったアプローチ(3)
(参照URL:http://ameblo.jp/halariga/entry-10476820847.html)
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