アリアケジャパン(2815):業績フォロー(10.8.20) : 春 研一
すでに、8月6日にブログに決算速報を掲載しているが、アリアケジャパン(2815)の業績フォローを報告する。
決算速報: http://ameblo.jp/halariga/entry-10612174114.html
2011年3月期第1四半期連結業績は0.9%増収、89.3%営業増益、2.2%税前増益、3.6%純利増益であった。
まず、売上高と営業利益について、単体(国内)と子会社(主として海外)に分けて見た表を下に示す。
国内の売上高は前年度に期を追うごとに伸び率が高まっている。そして、第4四半期には前年同期比二桁増に乗せたが、この第1四半期にはさらに伸び率が高まった。
これは前回のレポートでも述べたように、それまでの単品営業から、トップセールスによる企業対企業の営業に変えたことが効を奏したものと考えられる。
これによって商品ごとの粗利率は低下するが、販売数量増が期待できるため、会社全体としては利益率が上昇するものとなる。実際、単体の四半期ごとの売上高と営業利益の伸び率を比較すると、一貫して営業利益の伸び率のほうが高くなっており、会社側の狙い通りと言えよう。
ただし、前年度に関しては、原油を初めとしてコストが低下しており、むしろ新営業政策の効果よりコスト低下の方が大きく寄与したと考えられる。前年度の第4四半期からは売上高の伸び率が大きく高まっており、またコストも大きくは変っていないと思われ、本格的に新営業政策の効果が出てきたと考えてよさそうである。
海外を中心とする子会社に関しては、売上増加がいよいよ始まったと判断できよう。前年度の第4四半期の子会社売上高が51.5%増となっているのに対して、第1四半期は23.0%増と低下しているように見えるが、これは為替の影響である。
一方、海外の営業利益については、若干赤字が拡大しているが、円高を考えると悪化幅はもう少し大きかったことになる。
この中身は、中国の利益増が欧州の赤字拡大に食われてしまったものである。欧州の場合、立ち上げ期にあり、徐々に固定費が増えているものの、売上増のピッチが会社の見込みを下回っていることによる。海外の売上増は伸び率を見ると大きなものだが、今のところ会社側の見込み、市場の期待を下回っていると言えよう。
最後に営業外の為替差損について考える。同社は海外工場で加工した原料を国内に持ち込んでいる。そのため、コストを事前に確定させる目的で為替デリバティブを保有している。これは過去から行ってきたことであるが、最近会計制度が変更されたことによって、デリバティブを決算期ごとに時価で評価するようになり、大きな為替差損益が計上されるようになった。
基本的には輸入に対する外貨の手当てであるから、円高になれば差損が、円安になれば差益が発生する。これは、デリバティブを保有しなかった場合、どうなるか考えてみよう。
当然、原価に直接反映することになるので、逆に円高ならばコスト低下、円安ならばコスト高となる。ただし、デリバティブは数年分保有しているため、変動額は予約をしなかった場合に比べて大きなものとなる。メカニズムとしてはこのようなものである。
以上が同社の業績の現況である。
さて、現時点の株のバリュエーションはPBR約1倍、PER約20倍である。かつて、日本株が高い評価を受けていた時代であれば、同社のポテンシャルを評価して、割安という考え方もできたろう。しかし、食品株の平均PERが13-15倍に低下した現状を考えると、現時点のバリュエーションは即座に割安と言えるものでもなかろ う。
ベストシナリオは欧州の売上がかつての日本同様、急拡大し、企業全体としても20-30%を超えるような成長が続くことである。同社の技術を考慮すれば、どこかの時点ではその可能性もあろう。しかし、同社のビジネスがある市場に浸透してゆく場合、どうしても初速はゆっくりとしたものにならざるを得ない。
国内の再成長はどうやら本物の可能性が高まってきたことから、株価の上昇スピードはこの欧州の売上拡大ピッチに依存していると考えられる。
その面からは、日本に成長ポテンシャルを持った企業がすくなる中、今後とも四半期ごとの業績のフォローアップが欠かせない企業の1社であろう。
なお、同社の欧州市場でのポテンシャルについて深く分析したレポートを作成しています。興味のある方はご覧ください。
「アリアケジャパンの秘密(34ページ)」→ http://ameblo.jp/halariga/entry-10590292674.html
ブログでは、その他企業の決算速報や関連記事の紹介を行っています。興味のある方は下の株式関連記事目次をご覧ください。
株式関連記事目次: http://cherry100.blog108.fc2.com/blog-entry-114.html
「人気ブログランキング」に参加しています。記事がお役に立ちましたら、下のバナーをワン・クリックお願いいたします。大きな励みになります。

| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- フランス国債格下げの影響が重石に? : 今日の日経平均株価は? 1月16日(2012.01.16)
- 欧州情勢に安心感? : 今日の日経平均株価は? 1月13日(2012.01.13)
- スペイン・イタリアの国債入札に注目 : 今日の日経平均株価は? 1月12日(2012.01.12)
- 相次ぐユーロ圏の国債入札を控え動きにくい展開か : 今日の日経平均株価は? 1月10日(2012.01.10)
- 雇用統計は良かったが・・・:米国マーケットを振り返る 1月6日(2012.01.07)
「B 銘柄関連情報(マテリアル系)」カテゴリの記事
- 【伊藤園の優先株(25935)】 : 春 研一(2011.05.21)
- 伊藤園の優先株(25935):注目銘柄 : 春 研一(2010.12.24)
- 注目企業の財務株価分析:大塚ホールディングス(その2)(2010.12.18)
- 注目企業の財務株価分析 : 大塚ホールディングス(2010.12.11)
- キユーピー(2809) : 春 研一(2010.09.30)
「5. 春 研一」カテゴリの記事
- 日本証券アナリスト協会主催の個人投資家向け無料会社説明会のお知らせ(7月) : 春 研一(2011.05.30)
- 【伊藤園の優先株(25935)】 : 春 研一(2011.05.21)
- サイゼリヤ(7581)の実力 : 春 研一(2011.04.27)
- サイバーエージェント(4751)の真実 : 春 研一(2011.04.18)
- 物語コーポレーション : 春 研一(2011.04.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント