沢村十四郎レポート2011年8月(その2)
【2】SP500と在庫循環モメンタムについて(指標の見方)
今月はSP500株価指数と米国在庫循環モメンタムの関係についてレポートします。通常、SP500モメンタム(前年同月比)と在庫循環モメンタムは連動します。しかし、時々、連動性が崩れることがあります。何か異常事態が起こっている時に発生します。そういう以上事態を認識して資産配分を調整することは非常に重要です。今回のクラッシュでは一層強く認識しました。
以下のグラフを参照しながら説明しましょう。
2002年後半から2003年初めにかけて、在庫循環モメンタムが上昇しているのにもかかわらず、SP500モメンタムは下降をして下方乖離しました。この時は、米国がイラクを攻撃する前の時期で、国際的な緊張が高まっていました。
そのため、リスク資産である株式から回避され、本来の価値より下げており、割安だったのです。一般の投資家はリスクが高いと判断し、様子見や株式等のリスクの高い金融商品を避け、米国債や現金比率を高めていました。しかし、下方乖離の状況からは株式の配分を高めすべきことが判ります。結局、米国のイラク攻撃開始とともに抑えられていた株価は上昇し、在庫循環モメンタムにキャッチアップして株式は高いリターンとなりました。
2006年後半には上方乖離が発生しました。在庫循環モメンタムが下落しているにもかかわらず、SP500モメンタムは上昇しました。この時に発生していたのが、過剰流動性による金融相場です。株価は実体経済の変動を先取りして動きますが、過剰流動性がある場合、実体経済とは関係なく、投機資金の流入によって動きます。その結果、SP500モメンタムが本来の価値より割高なレベルまで買われたのです。
この状況を把握していれば、株価の上昇とともに利食いしていき、現金と米国債へシフトする戦略が有効と判断できます。結局、過剰流動性の解消とともに株価は下落して割高な状況は解消しました。 (いわゆるサブプライム問題とリーマンショック)
7月末現在は、在庫循環モメンタムが下降しているにもかかわらず、SP500モメンタムが上昇して上方乖離が発生しています。これを引き起こしたのは、米国のFRBが去年11月に始めたQE2です。この金融緩和によって過剰流動性が発生し、株価や資源価格、穀物価格が上昇して世界的なインフレを引き起こされたのです。SP500の上方乖離が拡大している状況は要注意だったのですが、実際、8月に入ると株や商品で急落が発生しました。改めて乖離している時期は防御を固めておかねばならないと実感しました。
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本文中で使用しているデータやグラフ類は主に次の各社の公表しているものにお世話になっております。経済産業省、内閣府、日本銀行、東京証券取引所、CME GROUP、CBOE,CNN MONEY、MSN MONEY、アット・ニフティ・ファイナンス、Yahoo!ファイナンス、東洋経済新報社、サーチナ、ゴールデン・チャート、外為どっとコム
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