来年の株式市場について考えてみたいと思います。
日本の株式市場の短期的な変動は、ダウ平均株価や為替(ドル円やユーロ円など)に大きく左右されることはすでに申し上げました。この場合、問題はダウ平均株価や為替の短期的な動きを合理的に予測しなければなりません。実際にはそれが非常に難しい。
ところが、株式市場の中長期的な動きはいくつかの景気波動に大きく影響されます。株価というものが経済のダイナミズムを反映するという性格を勘案すれば、非常に単純明快な関係があります。短期的な投資の場合頭を痛める数多くの難しさを大きく軽減することができます。
この短期的投資と中長期的投資の関係は風と「こいのぼり」の関係ようなものです。
風にはためく吹き流しに注目してください。この吹き流しの中の一本の尻尾の部分に注目して、それが1分後にどの位置にあるかを予測しようとすると、不可能ではないのでしょうが極めて困難な作業になります。これが短期的投資。
次に、風が東から西に吹いている場合、吹き流しやこいのぼりはどのような状態にあるかを考えてみましょう。頭は東、尻尾は西となっていると考えるのが自然です。これが中長期的な投資。投資は勝てる土俵で勝負することが鉄則です。経済波動を重視するという観点から、このブログのタイトルを「マクロウェーブ投資」と名付けました。
では、経済波動の一つである在庫循環に焦点を合わせて、株価の動きを見てみたいと思います。使用する鉱工業「在庫循環モメンタム」は出荷金額の前年同月比増減率から在庫金額の前年同月比変動率を差し引いて作成したものです。別の機会にもう少し詳しくご紹介するつもりです。
この鉱工業循環モメンタムのリーマンショック以降の動きの日経平均株価を重ねると次のようになります。
基本的に両者の連動性が高いことが見て取れます。風とこいのぼりの関係です。もっとも完全なものではありません。2010年7月から2011年3月にかけて両者のかい離が大きく拡大しました。背景は米国の量的金融緩和政策(QE2)がダウ平均株価を押し上げ、それに連動して日経平均株価も上昇したこと。このように、いつも完全に連動資するというわけではありませんが、景気波動を頭に入れておくと、そのような状況を的確に把握することに役立ちます。
そこで気になるのは、果たして2012年にこの鉱工業在庫循環モメンタムがどのような形になるかということ。簡単な前提を置いてシミュレーションをすると次のようになります。図の中の細い実線は出荷金額の増減率、細い点線は在庫金額の増減率を示しています。
ここから読み取れること
(1)在庫循環モメンタムは2012年1月以降5月ごろまで上昇基調が鮮明にになる。2012年1月の数字が発表される2月末あたりから6月末あたりにかけて、日経平均株価は上昇する可能性が高い。
(2)2012年6月以降の在庫循環モメンタムは軟調な展開になると見られる。となれば、日経平均株価も7月末から年末にかけて停滞気味に推移する可能性がある。
(3)しかしながら、シミュレーションには復興関連の需要動向を十分に織り込んでいないため、復興需要が顕在化すれば鉱工業在庫循環モメンタムも押し上げられる。その場合は、日経平均株価も上昇が期待できるため、2012年は通年にわたって株式投資にとって好ましい状況が継続することも期待できる。
というわけで、欧州情勢や為替をはじめとして、悲観的な材料が数多くみられる中ではありますが、個人的には株式市場は決して悲観したものではないと考えています。状況によっては、このような予想から大きく外れることもあるかもしれません。しかし、毎月経済波動の状況をしっかり把握していくことによって軌道修正は十分に可能と考えています。
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